2021年9月30日
繁華街からやや外れた立地の新築ホテル
カラオケ付帯パーティルームに予約殺到
――Hotel Sanrriott北浜（大阪市中央区）

　　
　大阪市中央区、地下鉄の北浜駅と天満橋駅のほぼ中間に建つ「Hotel Sanrriott北浜」は2018年12月にオープンした。敷地面積約78㎡（約23坪）という狭小地ながら、最上階の11階から４階までを１フロア１室で構成することで、１部屋あたり約40㎡のゆったりとした客室空間を実現している（２階と３階は各フロア２室構成）。11階と10階を「パーティルーム」とし、ほかの客室も凝った内装デザインを採り入れることで、周辺エリアのシティホテルやビジネスホテルとの差別化を図っている。
 
　同ホテルの最大の売りとなっているのが、カラオケ付帯ルームである。18年12月のオープン時、11階の「パーティルーム」１室に通信カラオケDAMを導入したところ、予想以上の高稼動を記録し、平均単価２万5,000円を超える人気のルームとなった。その後、段階的にカラオケを追加導入し、現在は11階と10階の「パーティルーム」２室（各６人収容）、９階と８階の「レトロモダン洋室」２室（各４人収容）、４階から７階までの「レトロモダン和室」４室（各４人収容）の計８室にカラオケを導入するに至っている。
 
　カラオケ導入の狙いについて、同ホテルを運営する㈱サンユー都市開発事業戦略室の山口浩司室長はこう説明する。
「ホテルのある北浜エリアは、難波や心斎橋といった市内の繁華街からやや外れた場所にあり、通常のビジネスホテルとは違ったアプローチを追求しました。また、カラオケに関しては、ホテル周辺の約２キロ圏内にカラオケ店舗がほとんどないため、カラオケ愛好者への訴求ということも考えました」。
 
　オープン当初は、国内外からの観光客需要を見込みつつ、おもに20〜30代の女性層をメインターゲットとしたホテルづくりを実践。客室の広さを活かし、４人から６人のグループ利用ができるホテルとしての特徴を前面にアピールした。カラオケも、そうした女性グループが楽しめるアイテムのひとつとして導入。オープンから１年強が経過した20年２月には、関西を拠点とする若い有名YouTuberに依頼し、YouTube、TikTokなどのSNSチャンネルから同ホテルの情報を発信してもらったところ、「広い客室でカラオケが楽しめるホテル」として、いっきに認知が広まったという。
 
　「そのYouTuberのチャンネル登録者は10代20代の若い女性が多く、カラオケ付帯のパーティルームは、あっという間に予約でいっぱいになりました。お客さまの50％以上は関西圏からで、宿泊目的というよりも、近場のスポットに遊びに来る感じでご利用いただいていると考えております」（山口氏）
 
　YouTuberとのコラボにより、当初の想定とはやや異なる「10代、20代の地元客」の集客に成功した同ホテル。その後、新型コロナウイルスの感染拡大によって、県をまたいでの往来の自粛が求められたことで、ますます地元客の需要が増加。さらに、カラオケボックスの休業や時短営業の影響から、ホテル独自の感染予防対策の徹底と、フロア1室の客室構造で他の利用客と交わらないという動線も奏功し、同ホテルのカラオケ需要が増加。
　今年に入ってからも高稼動を維持しており、３月にはオープン以来の最高売上げを記録。カラオケ付帯ルームに限れば、稼働率は90％に達しており、多いときには演奏数が１室あたり月2,000曲を超えるという。
 
「客室へのカラオケ導入は、レジャーホテルなどでは一般的ですが、シティホテルやビジネスホテルではまだまだ珍しい。10代の女子会利用なども多いのですが、レジャーホテルよりも、当社のようなホテルのほうが利用のハードルは低いといえます。また、カラオケ導入に際しては、㈱第一興商大阪支店の協力のもと、高品質な音響空間の構築に注力し、そうしたカラオケ空間としての充実が、リピーター獲得に結び付いていると認識しています」（山口氏）。
　各ルームは飲食物持ち込み可。女子会利用の場合、パーティグッズや各種アイテムの要望も多く、同ホテルでは可能な範囲で柔軟に対応するとしている。
 
　YouTuberとはその後も不定期でコラボを行なっており、YouTubeで情報発信されるたびにホテルの知名度は上がっている。この夏休みに関しては、まん延防止等重点措置が長引いている影響で、例年のような集客は望めないが、今後ワクチン接種が広がってコロナが収束に向かったときには、現状の地元客だけでなく、当初のターゲットだった観光客に囲い込みにも注力していきたいとしている。