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瀬戸内国際芸祭 2025

「抱擁・小豆島」ワン・ウェンチー(台湾):地元で伐採した4,000本の竹を島民らと編み上げたの作品(小豆島)

いざ瀬戸芸へ
春、夏、秋のアートの祭典開幕
 
 3年に一度開催される「瀬戸内国際芸祭 2025」(瀬戸芸)が開幕した。瀬戸芸は2010年にスタートし、6回目となる今回は、春(4月18日~5月25日)、夏(8月1日~8月31日)、秋(10月3日~11月9日)の3シーズンに分けての開催となる。作品数は256作品、参加アーティストは37の国・地域におよび、国際色豊かなアートの祭典として会期中は大勢の観光客が訪れることが予想されている。ゴールデンウィーク期間中には、島を訪れる人があまりに多かっため、島のレンタサイクルの在庫がなくなったり、フェリーに乗船できないケースもあったようだ。シーズン限定の作品や会期中でも休みのある作品があるので、訪れる際には注意が必要だ。
 
 これまでの来場者数をみると、2010年が93.3万人、第4回目となる2019年は117万人と100万人を突破。コロナ禍での開催となった2022年は73.3万人となった。今回はインバウンドの急増もあり、100万人を再び突破することが予想され、春会期の動向をみると特にアジア圏からの観光客が増えている。
 
 経済波及効果についても、2010111億円、2019年は180億円と地方都市にとっては少なからぬ効果をもたらしている。こうしたフォローの風は都市開発にも好影響を及ぼし、瀬戸内の島々へのフェリーが発着する高松港に今年2月、「あなぶきアリーナ香川」が開業。また、アリーナ隣接地では2027年夏のオープンに向け富裕層をターゲットにした「マンダリンオリエンタル高松」が建設中だ。瀬戸芸という唯一無二のアートイベントを地道に定期開催してきたことでイベントの確固たるブランディングが確立され、ひいては開催地域の活性化にもつながっている。しかしこれは、総合プロデューサーの福武總一郎氏、総合プロデーサーの北川フラム氏、ボランティアである小エビ隊、地域住民など関係者の不断の努力によるものである。地方再生、地域活性化は喫緊に解決すべき課題だが、瀬戸芸にはその解を探るヒントが潜んでいるといえる。

「ナップヴィナス」伊東敏光+広島市立大学芸術学部有志:全長23mの女神像。解体された家屋の建材や採石場で使用された道具、農具などでつくられている(小豆島)

「New Perspective」矢野恵利子:キャラクター(肉体・物体)、セリフ(言葉)、コマ割り(時間・枠組み)で構成されるマンガをモチーフに、各要素を解体して3つのレイヤーに再構築することで、鑑賞者に多様な視点で楽しむことを促している(小豆島)

「うみのうつわ」長澤伸夫穂:光ファイバーを編み込んだ船で動脈を表現。船は宙に浮かんでおり、鑑賞者は中で横たわることができる(小豆島)

「休校書店 メコチャン」ザ・キャビンカンパニー:女木島でたったひとりの小学生をモデルに制作した書店空間(女木島)