DX推進企業に聞く
㈱JTB
「共創」を意識したDX化を推進し
旅行者、事業者、地域の「三方良し」を実現へ
全体的にDX化が立ち遅れているといわれる観光業界にあって、今年2月、社内に観光DXチームを新設し、そのスピードアップを図り始めた㈱JTB。
そこでは、事業者や自治体といった関係する各所との「共創」が強く意識されており、各種業務の効率化とともに、地域観光の永続性を高めるための仕組みづくりがなされている。
観光DXチームを立ち上げ
「交流創造事業」を加速
国内旅行の需要回復にインバウンド消費の高まりが加わり、一気にⅤ字回復の気配が強まった観光業界。その一方では、需要の急回復に伴う深刻な人手不足やオーバーツーリズムなど、さまざまな課題が表面化している。
新型コロナ禍で先行きの不透明感が強まっていた2020年度に、中期経営計画「『新』交流創造ビジョン」を掲げた㈱JTBでは、この2月に社内に観光DXチームを立ち上げ、一連の課題解決に向け、観光業界におけるDX化の推進を加速させる姿勢を打ち出している。
「私たちを取り巻く環境としては、新型コロナ前からの課題として、人口減少による国内市場の縮小や利益率の低下、さらには多くの事業者の参入に伴う競争の激化といった課題がありました。そこにコロナによる旅行者数の減少が追い打ちをかけ、さらに宿泊施設や交通機関などではソーシャルディスタンスが求められました。営業の効率化を図ろうにも、逆にこれまで以上に衛生管理や人手も含めた対応が不可欠になっているのが現状です」。
そう語るのは、ツーリズム事業本部エリアソリューション事業部に立ち上げられた「観光DXチーム」の西尾一輝チームマネージャー。西尾氏は続けて、「人々のライフスタイルや価値観にもさまざまな変化が起こりましたが、私たちのチームでも、そうした変化を前提にして、たとえばローカルとグローバル、リアルとデジタルといった要素が関連しあうような、時代に見合った仕組みを自ら切り開いていく必要に迫られています」という。
もともと社内に分散していた3つのチームを大きな枠組みに編成し、その責任者になった西尾氏は、「人々の価値観は確かに変化しましたが、旅行そのものには人々が求める本質的で普遍的な価値があることは間違いありません。観光・レジャー業界はコロナで『不要不急』と言われましたが、わたしたちからしてみると、たしかに不急かもしれないが決して不要ではない。そう強く信じて、アフターコロナに対応する体制を整えています」とし、その軸となる観光DX化の必要性を語る。
地域観光の永続的な発展に向け
DX化でも意識される「共創」の姿勢
JTBが展開する観光DX化に向けた各種の取り組みは、同社が事業ドメインとして掲げる「交流創造事業」というワードが示す通り、関係するさまざまな立場との「共創」が強く意識されている。それぞれの地域の観光事業者や自治体が抱える課題を解決し、交流を増やすサポートを行うほか、地域における魅力的なコンテンツをその地域とともに作り上げていくこと、さらにそれをエコシステムとして構築することがテーマに掲げられている。
これまでの「送客」主体の業務から、「誘客」を意識した取り組みを強化していくことは、エリアソリューション事業部という名称にも示されている。顧客が抱える課題解決をその場限りのフォローはなく、観光地の永続
的な課題解決や発展に向けたサービスソリューションとして提供することが、これからの観光DXには欠かせないというスタンスだ。
たとえば、九州地方のある観光スポット周辺で発生する大渋滞を、日時指定チケットの事前購入を自治体などに推奨して、いわゆるオーバーツーリズムの弊害を解消した事例がある。
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